思考実験(4)
●「ただいま〜!」
のび太は、元気良く、どこでもドアから出てきた。
●「あ〜、のび太くん、おかえり〜」
ドラえもんは、部屋の中で、漫画の本を読みながら、寝転んでいた。
(そういえば、こいつは、いったいなんのためにいるんだろう?ていうか、どこでもドアだけあれば、こいつはいらないんじゃ……)
そんな疑問を感じながら、のび太は かばんを下ろした。
●「で、のび太くん、どこでもドアはどうだった?」
●「うん、大丈夫だった。ドアをくぐり抜けたら、もう目の前が学校でさ、ぜんぜん問題なかったよ♪」
●「そうなんだ、それは良かったね」
●「でもね、ひとつだけ気になることがあるんだ」
●「ん、なーに?」
●「あの……もしも、もしもだよ。どこでもドアに入った僕が、分子破壊光線ですぐに消滅しないで、体がドロドロに溶けるような毒ガスで、阿鼻叫喚、筆舌に尽くしがたい生き地獄を味わうとしたら……」
●「ぶふっ〜〜〜!!」
ドラえもんは、飲んでいたお茶を噴き出した。
●「な、なにを言い出すんだい!のび太クン!」
●「あ、いや、例えばの話だよ、毒ガスは、適当に言っただけ」
●「な、なんだ、そうなんだ。まったくそんなことあるわけないじゃないか!ア、アハハハハハハハ!!」
●「まぁそうなんだけどさ、たとえばの話」
●「(これだから、この馬鹿は、ときどき油断できないんだ……)へぇ〜、それで?」
ドラえもんの目が怖かった。
●「あ、いや、たださ、そういうことが、実際に起こりえるとしたら、どこでもドアによる転送は成功したとは、言えないんじゃないのかなぁ〜、と思って」
●「どうしてだい?」
●「だってさ。どこでもドアの方に残された のび太は、『ただ立っていて、体の構造を調べられただけ』なんだから、当然、彼の意識は、そのまま継続していたはずだよね。それなのに、肉体をスキャンされた次の瞬間に、遠くの場所で、自分と同じ構造の のび太がもう一人できたよと言われても、そんなの『自分そっくりの他人』ができたとしか思えないよね。
だって、コピーされたソイツが、今、何を見て、何を感じているのか、まったくわからないんだし。逆に、コピーされた方は、どこでもドアに残ったのび太が、毒ガスにやられて、どんなに『痛く』ても、その『痛み』は、まったく伝わらないわけだしさ。まさに、他人と同じだよね。だから、どこでもドアに残った方ののび太からすれば、
どこでもドアで、『自分』が転送されるなんてことが起こるわけがないんだ!
体の構造を調べられただけなのに、突然、自分のイシキが別の体に、移るわけが無いじゃないか!騙された!
と考えるだろうね。
そして、遠くのどこでもドアから出てくるのび太なんか、やっぱり偽者だと結論付けて、
『ボクこそが、ボクだけが、のび太だ』と
呪詛の言葉を吐いて死んだんじゃないかと思うんだ。彼の立場からすれば、完全に、どこでもドアの転送は失敗だよね?」
●「いやいや、それは違うよ、のび太くん。
たとえ、
続きは書籍で
このお話しの続きと衝撃の結末は、下の書籍『哲学的な何か、あと科学とか』に載っています。

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