呪術(2)

死者は、虐殺者を呪い殺すことはできていない。これは歴史の事実だ。
だが、それでも、こう考えるかもしれない。
「そういう死者たちは、特殊な能力・呪術を持っていなかったからできなかっただけで、
 この世界のどこかに、そういう魔術、呪術を使えるものがいるかもしれないそういう人たちは、オカルト本ではなく、やっぱり史実をちゃんと調べてみた方がいい。
オカルト本では、大魔術師として紹介され、奇跡的な逸話などが紹介されている人でも、
歴史的にその人の人生をきちんと調べてみれば、
インチキがばれて詐欺で逮捕されていたり、
晩年は、弟子に見捨てられて、金に困って、惨めな生活のまま死んじゃったりと。。。
「てめ〜魔術使えるじゃないんかい!」
とまぁ、そんなもんである。

こういう魔術師たちを史実として、調べてしまえば、
何のことはない、ありがちなミモフタモナイ現実があるだけなのだ。

世間一般に知られている伝説的な人物から大魔術師まで、すべて史実を追いかけて、
「現実にどう生きたか?」を調べれば、
「全然、使えてないじゃん」というのがバレバレなのだ。

たしかに、若くて覇気があるときは、「俺、魔術使えるよ。不思議な力使えるよ。
キミに呪いかけてあげようか?……フフフ」とハッタリをかませば、
まわりの人間は「もし本当に使えたら」という恐怖と憧れから、
いくらでも集まってきたので、生活にも困らなかったが、
時間が経ち、ブームが終わって、信者がいなくなってしまえば、
「てめ〜金返せコラァ!働けオラァ!」
「す、すいません、まってください(ペコペコ)」
というミモフタモナイ老後を過ごしているのである。

年老いた魔術師たちのそういうミモフタモナイ現実があるにもかかわらず、
オカルト論者たちは、若いときの栄光だけを取り出して、「奇跡を起こす魔術師」
「隠された知恵・秘術を持つもの」という幻想を作り上げるのだ。
そして、その幻想が、次なる魔術師の存在を生み出し、幻想はさらに加速される。

そもそも、現代、「魔術」と呼ばれているものは、
すべて古代ユダヤ教の呪術を源泉としている。
だから、現代の魔術師たちは、結局のところ、ユダヤの秘術を母国語に翻訳して、
自己流にアレンジして使っているにすぎない。
というわけで、世界で一番、魔術・呪術に精通しているのは、ユダヤ人である。

そうなんだけども、やっぱり、
「ヒットラーがユダヤ人たちを虐殺したときに
 ユダヤ人はヒットラーを魔術で殺せなかった」
というミモフタモナイ歴史上の事実がある。
本家のユダヤが、魔術で何一つできなかったのに、
それを翻訳して見よう見まねでやっているものが魔術を使えるだろうか?

暴力集団に対して、本家本元の魔術プロ集団が、
「ここ一番」ってときに何もできなかったんだから
もはや何言ってもダメです、オシマイデス。

ミモフタモナイけど、現実ってそういうものです。