多世界解釈の問題(1)

●多世界なんて、日常的な感性では受け容れらない

ようするに、多世界解釈とは、

「1個の電子が、『こっちの場所にもある』 『あっちの場所にもある』 という感じで、多重に存在できるっていうなら、猫だって多重に存在するはずだ!」

「だったら、猫を見ている人間(私)だって、多重に存在するはずだ!」

「ということは、『この私』のほかにも、『たくさんの私』が存在し、『それぞれの私の世界』があるってことだ!」

という話だ。


ちょっと日常的には受け容れがたい話ではある。

しかし、多世界解釈の理屈は、実のところよくできている。

そもそも、人間だって、『電子と同じ物質』でできているんだから、人間にも量子力学を適用することは、当然で公平なことだし、人間にも量子力学を適用したら、「多世界がある」って結論になるのもしごく当たり前のように思える。

(だいたい、「生きている猫」と「死んでいる猫」が重なって多重に存在することを認めた時点で、『多世界』が出てくるのは『当然の帰結』だ。だって、「生きている猫」の視点からみたら、「死んでいる猫」という存在は、あきらかに『別世界にいる自分』ということになるのだから)

結局、多世界解釈は、何か特別な前提や仮説を持ち込んでいるわけではなく、単に、同じ物質である人間(観察者)に対しても、コペンハーゲン解釈を適用しただけ
なのだから、
『コペンハーゲン解釈が正しい』と認めるならば、『多世界解釈も正しい』と認めなくてはならない。

そんなわけで、この多世界解釈を熱狂的に支持している人たちも多い。
(ここでは、彼らを「多世界解釈ファン」と呼ぼう。)

しかし!
面白いことに、実際のところ、科学界では、コペンハーゲン解釈は受け容れられているが、多世界解釈の方は、受け容れられているとは言いがたい。

それどころか、黙殺されていると言っても良いだろう。

なぜだろうか?
多世界解釈ファンは、この現状に不満を持っており、「多世界解釈は、不当な扱いを受けている」と考えている。

今回は、多世界解釈が、「科学として受け容れられていない理由」を説明しよう。

理由1)宇宙が分岐する?そんなのSFみたいな話、ありえないよ!

『人間』が観測するたびに、宇宙は、どんどん分岐していくの?
 じゃあ、宇宙は、無限にどんどん増えていくの?
 そんなSF(スコシフシギ)的な馬鹿げたことありえるわけないじゃん!
 それに、宇宙にとって、『人間の観測』ってそんなに特別なものじゃないと思うけどなぁ


多世界解釈に対し、上記のような批判をする人たちが多いが、多世界解釈ファンにとっては、まったく的ハズレなものである。

一般的に、『多世界(パラレルワールド)』解釈という語感から、「人間が観測するたびに、別の世界が生まれて、世界が増えていく」という理解をする人たち(または、そのように説明する人たち)がいるが、それはまったくの誤解である。

多世界解釈では、あくまで、宇宙全体が、「巨大な可能性の波(=ひとつのシュレディンガー方程式)」であると考えている。

(原子や分子などの物資が、「可能性の波(シュレディンガー方程式)」として記述できるなら、世界全体も同様に、大きな「可能性の波(シュレディンガー方程式)」として記述できると考えるのは、当然の帰結だ)

だから、「人間が観測したら、世界が分岐する」って発想がそもそも間違っている。

人間が観測する/しないに関わらず、「世界は、あらゆる可能性を含んで、いまここに存在している」のだ。

つまり、「最初から、分岐している」と言える。

そして、「人間(私)は、たまたま、その可能性の中のひとつだった」という話であり、「人間が観測したら、世界が増える、分岐する」などのような人間を特別視した主張をしているわけではない。

また、「多世界(パラレルワールド)なんて、SF(スコシフシギ)的でナンセンスだ」という批判も的外れである。

なにも、多世界解釈は、無理やり「多世界」を持ち出してきたわけではない。

多世界解釈は、
コペンハーゲン解釈を観測者(人間)にもちゃんと適用して、論理的に考えたら、多世界という存在が導き出せたよ〜
という話なのだから、
それを単に「SFだ!ナンセンスだ!トンデモだ!」と否定するのは、「ただの心理的な抵抗で難癖をつけている」だけであり、「何の根拠もない批判」をしていることになる。

そういう人は、多世界解釈ファンからは、手痛い反撃をくらうだろう。
それは、単に、あなたが、固定観念に毒されているだけで、たとえば、『地球が丸い』という事実を聞いて、ありえないと笑った人々と同じだぞ」と。

ともかく。
多世界解釈ファンは、上記のような「誤解」や「心理的な抵抗感」を持っている人たちが大勢いるから、「多世界解釈は世間に受け容れられていないのだ!」と考えている。

したがって、彼らは、
みんなの誤解を解いて、多世界解釈が世間に受け容れられれば、科学の正統な理論として認められるんだ!
と考え、今も布教活動にいそしんでいらっしゃいます。

がんばれ!多世界解釈ファン!

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