哲学以前、神話の時代 20万年前〜

今の人類と同種であるホモサピエンスは、約20万年前に発生した。
彼等は、高い知能をもち、道具と言葉を駆使し、外敵を屠り、
またたく間に世界中に広がっていった。

しかし、知能があるゆえの苦悩が起こる。

「気がついたら、ここに自分が存在していた。なぜか?
 腹が空くから食べ物を探して生き延びるが、最後には苦しみながら死んでいく。
 なぜこんな苦しい目に合うのか?
 この世界はいったい何なのか?死んだらどうなる?私はどこへ行く?」

そこで「神話」が生まれる。

「はじめに神が6日間で天地を創造した。土からアダムを、次に彼の肋骨からイブを作り、
 2人をエデンの楽園に住まわせる。ところが、イブは、悪魔にそそのかされ、
 禁断の知恵の実をアダムに食べさせる。こうして、アダムとイブは、楽園を追放され、
 その罪として人間は死すべき存在となり、女は産みの苦しみを、
 男は日々の労働を課されることになった」

ある宗教の世界創造の神話である。
内容は、タワゴトだから無視していい。

重要なのは、古代から人間は、「世界」と「生きる意味」について
なんらかの説明を欲しがったということだ。
説明があれば、―たとえ、それがどんなに根拠のない嘘でも―、人間は満足する。

きっと人類最初の嘘つきが、かわいそうな人々を慰めるため、
「世界とは何か?何故我々は苦しんでいるのか?死んだ後の行き先は?」
などを説明する物語を創作したのだろう。
それは、いつしか、民族における「神話」となり、一定の宗教的権威を持つようになり、
民族を結びつける強力な絆となった。

哲学以前、「世界」を説明する役割は「神話」が担っていた。