慣性質量と重力質量
「
重いものでも、軽いものでも、同じ速さで落ちる」
ということが、
ガリレオの思考実験から明らかになった。そして、ガリレオの弟子が「
真空を作り出す装置」を発明し、その実験から、ガリレオの仮説が正しいことが証明された。
さて。
実験結果として、実際に
「
重いものでも、軽いものでも、同じ速さで落ちる」
のだから、もはや異論の唱えようもないのだが……、
それでも納得できるだろうか?
だって、「重い」ってことは、ものすご〜い力で、地球に引っ張られているのである。「軽い」ってことは、ちょっとしか引っ張られていないのである。
「
じゃあ、ものすご〜い力で引っ張られている『重いもの』の方が、速く落ちるに決まっているのでは?」という疑問が当然出てくる。
この疑問の答えは、案外、簡単で慣性質量と重力質量が等価だからである……
まぁ、専門的は話は置いといて……、
ちょっと、無重力の空間にプカプカと宇宙飛行士が浮かんでいる様子を想像して欲しい。
今、宇宙飛行士の目の前には、バーベルが浮かんでいる。そのバーベルの重さは、500キログラム。
さぁ、無重力空間を体験したことのない僕らは、直感的に 「
いくら重たいバーベルでも、簡単に動かせるでしょ〜」 と思う。
「
だって、無重力ってことは、重さがないってことでしょ!」というわけだ。
だが、それは勘違いで、実際には無重力の空間でも、重たいもの(=質量の大きいもの)を動かすためには、質量に比例した大きな力が必要なのだ。(F = m・a)
プカプカ浮いているからって、簡単に動かせるなんて、思ってはいけない。
(ていうか、もし、「
無重力では重さがないから自由に動かせる」としたら、宇宙飛行士は、「スペースシャトル」 も 「月」 も、風船のようにグルングルンと、ぶん回すことができてしまうではないか)
逆に、ピンポン玉のような軽いものだったら、簡単に動かすことができる。
つまり、結論として、無重力空間(慣性系)において、
「重いもの」は動かしにくい……動かすには「大きな力が必要」。
「軽いもの」は動かしやすい……動かすには「小さい力で十分」。
ということが言えるのだ。
さてと、じゃあ、このバーベルとピンポン玉を、地球の近くに持っていこう。
2つの物体は、地球の重力で、引っ張られるわけで、当然、
「重いもの」は大きい力で、引っ張られる。
「軽いもの」は小さい力で、引っ張られる。
ということがおきる。
さぁさぁ、ここに自然の美しいバランスがある。
「重いもの」は動かしにくい……が、その分、大きな重力がかかっており、
「軽いもの」は動かしやすい……が、その分、小さな重力しかかかっていないのだ。
だから、
「重いもの」も「軽いもの」も、同じスピードで落ちる。
たとえるなら、
ダンプカー(重い)をプロレスラー(力が大きい)がひっぱり、洋服ダンス(軽い)を子供(力が小さい)がひっぱるという競争をさせて、「ヨーイドン」とやったとき、ちょうど良いハンデになって、結果的に、同じ速度で進むという話だ。
まとめると、
「
すべての物体は 『動かしにくさ』 と 『重力のかかりやすさ』 が等しい」
ので、すべての物体は、同じ速度で落ちるのである。