ガリレオ
「
重いものでも、軽いものでも、同じ速さで落ちる」
直感的には、「
重いものほど、早く落ちる」と思える……。実際、はるか昔には、そうだと誰もが考えていたし、現代人のボクらだって、学校で、「
実は違う」と教えられなければ、大人になっても、そう考えていたかもしれない。
1600年頃。そんな昔に、
ガリレオは、
「
重いものでも、軽いものでも、同じ速さで落ちる」
と述べている。
一応、ガリレオの逸話としては、
「
ピサの斜塔から、物を落として実験し、それでこの事実を知った」
とされているが、これは後世の作家が付け加えた創作である。
だいたい、空気のある地球で、「
重いものと軽いものを落とす実験」をやれば、軽いものは、空気抵抗を受けやすいので、確実に「
重いものの方が先に地面に着いてしまう」
ピサの斜塔の実験なんて、ガリレオの予測を否定する結果にしかならない。
実際には、空気のない真空で、落下させて確かめる必要があるが、真空実験器で『鉛』と『羽毛』を落として、その事実が実証されたのは、ガリレオ死後のことだ。
では、ガリレオはどうやってこの事実を知ったのか?
ガリレオは、こんなふうに考えたのだ。
(ガリレオの思考実験)
まずは、↓の前提Aが、正しいと仮定しよう。
前提A:「『重い玉』と『軽い玉』では、『重い玉』の方が早く落ちる』
で、つぎに、『重い玉』と『軽い玉』を
紐で結びつけて、落下実験を行ったとする。
そうすると、
・
『重い玉』は、速く落ちるのだから、
『軽い玉』を↓に引っ張る。
・
『軽い玉』は、遅く落ちるのだから、
『重い玉』を↑に引っ張る。
ようは、『重い玉』の方が速く落ちるが、
結局は、『遅く落ちる軽い玉』という
足手まといを引っ張って落ちることになるため、『重い玉1個』のときより、
遅く落ちることになる。
というわけで、
紐付の『重い玉』と『軽い玉』は、「中間ぐらい速さ」で落ちる、と結論できる。
だが、それって、おかしくないだろうか?
だって、『重い玉と軽い玉を紐で結んだ物体』をひとつのカタマリとして考えるなら、
あきらかに『重い玉』よりも重い。
だから、
『重い玉だけ1個』を落としたときより、速く落ちるにきまっている。
なのに、上記の結論では「ひも付きの2つ玉」は、『重い玉』より遅く落ちることになってしまった。
ありゃりゃ、おかしなことになってしまった。
ということは……。
前提Aが間違っているのである。
「『重い玉』と『軽い玉』では、『重い玉』の方が早く落ちる』という前提は成り立たないのである。
だから、前提Aの反対である「
重い玉も軽い玉も同じ速さで落ちる」が、正しい前提になる。
という思考実験から、ガリレオは、この事実に気がついたのだ。
(補足)
そもそも、実験してから、「
あ〜、本当はこうなっていたんだ〜」と事実を知るなんてことは、凡人にだってできる。
実験なんかしなくても、パッと、こういうことが、わかってしまうから、「
天才」なのだ。